ホロラー > 資料室 > 「ホログラム」が出てくるものたち

小 説



BLACK OUT(渡辺浩弐)

本書は,1995年から1996年にかけてテレビ朝日系のシリーズとして放映されたドラマの原作のミステリSFです.その第4話が「死者再生プログラム」で,副題が「AIホログラフィ」となっています.3次元コンピュータグラフィックスの精度が向上し,ホログラフィの発達との融合により実在のアイドルを卓上に立体再生する「3Dアイドル」などの商品が提示される一方で,そのあまりのリアリティにより事件が起きると言う内容です.ビデオも出てます.(幻冬舎文庫, わ-1-5, 1999年, ISBN4-87728-808-2)

ELECTRIC FOREST(TANITH LEE)

電気の森(ELECTRIC FOREST)に囲まれた一軒家でマグダラが見たものは…意識の転換の実験でアンドロイドに生身の人間の意識が乗り移ります.その,「電気の森」とは,Holostetにより投影された仮想の森です.Holostetは人間も投影できますが,近くで見るとあらが目立つのと,影ができないのでばれちまうそうです.(Daw Books Inc., UE1482, 1979年, ISBN 0-87997-482-6)

NANIWA 捜神記(栗府二郎)

上空にまではみ出す,ど派手なホログラムネオンのまたたく近未来の大阪,霊能探偵をしている時家鴒(ときやれい)のもとに「神様を捜してほしい」という依頼が舞い込んだ.第3回電撃ゲーム小説大賞<金賞>を受賞したサイバーホラー探偵小説の本作品は,電脳と霊能が入り乱れ,スピーディな展開で一気に読み切れます.ホログラムは,「ホログラムネオン」,「ホログラム表札」,「ドアにはめ込まれたホログラム動画」,「クリスマスツリーのホログラム」,「ゲームセンターのホログラム3Dディスプレイ」,「ヴァーチャルゲームシアターのホログラム投影装置」など脇役として多数登場します.(電撃文庫, く-1-1, 1997年, ISBN 4-07-305917-3 C0193)

また,続編にあたる「NANIWA 霊異記」(電撃文庫, く-1-2, 1998年, ISBN 4-07-309230-8 C0193)にも,一箇所だけ「ホログラムシール」(いわゆるピンクチラシ)が登場します.

あいどる(ウィリアム・ギブスン)

原題は「Idoru」で,英語の Idol ではなく日本語のあいどるを意味しています.このあいどるは日本人が開発したホログラム・ソフトウェアのヴァーチャル・アイドルで,世界的人気のロックバンドのメンバーがこのあいどると結婚するという噂が世界を駆け巡ります.ホログラムが単なる小道具ではなく,主役になっているという点で超おすすめです.(角川文庫, キ 6-4,2000年,ISBN4-04-265904-7)

イエスの遺伝子(マイクル・コーディ)

2002年のアメリカ.天才遺伝子学者のトム・カーターは人間の遺伝子を完全に解読できる装置を完成させた.しかし,この機械により自分の愛娘が脳腫瘍を発病して一年以内に死ぬことを知る.カーターは娘を救うため奇跡の治癒能力を持つイエス・キリストの遺伝子の謎を解くことにした.

この,遺伝子解読装置「ジーンスコープ」の出力装置のひとつとしてホログラムが使われています.遺伝子を解読して,その遺伝子をもつ人物の完全な3次元ホログラムを表示できます.ある場面では,このホログラムが主人公の危機を救うために役に立ちます.(徳間文庫, 2000年,コ 5-1, ISBN4-19-891267-X, コ 5-2,ISBN4-19-891268-8)

怒りの大洋(田中光二)

カバー裏のあらすじから抜粋すると,「海は一つの意思表示をしようとしている.大昔より大洋(わだつみ)は母なるものとして,人類と調和し,共存してきた・・・」というわけで,海が怒ってます!その海を探るための深海調査艇「おおしお」の装備のひとつが「生物探査用レーザーホログラフィ装置」なのです.これはどんな装置かというと,海水中の生物分布や懸濁物などを,3次元立体映像としてとらえることができます.(角川文庫, 4642,1980年,0193-141915-0946(0))

ヴァーチャル・ライト(ウィリアム・ギブスン)

西暦2005年のサンフランシスコ,大地震により倒壊したベイ・ブリッジにホームレスが住み始めた.とあるパーティでサングラスを盗んだメッセージ運搬の少女は男たちに追われることとなる.このサングラスは光子を必要とせずに直接視神経に作用して視覚を発生させる「ヴァーチャル・ライト」なのだ.しかし,それにはある秘密情報が・・・というわけで,ホログラムが本筋とはあまり関係無い小道具として登場します.ひとつは,「動く滝のホログラムがボンネットについたダイハツ・スニーカー」で,もうひとつは酒場の場面で客の1人が投射していた日本人の女のように見えるホログラムです.(角川文庫, キ 6-3,1999年,ISBN4-04-265903-9)

ヴァリス(フィリップ・K・ディック)

女友達の自殺をきっかけに,ホースラヴァー・ファットは狂い始める.麻薬に溺れ自殺に失敗するがピンク色の光線を浴びて神に出会ったと考えるようになる.そして,自分の体験と一致する映画「ヴァリス」に出会う.・・・という著者自身の神秘体験を交えたディック晩年の問題作です.ここにホログラムがいろいろと登場します.たとえば,「ホログラム的宇宙」,「ピンク色の光を明滅させる円筒状のホログラム」,「人工衛星でコントロールする人物のホログラム」,「超越宇宙としてのホログラム状の界面」,などです.(創元SF文庫, SFテ16, 1990年, ISBN 4-488-69605-8 C0197)

永遠の森―博物館惑星(菅 浩江)

地球の軌道上に浮かぶ巨大博物館<アフロディーテ>でおこるさまざまな出来事を解決する総合管理部署の田代孝弘ちゃんが活躍するの9つの物語.その,第3話「夏衣の雪」にホログラフが登場します.(あれほど,ホログラムだって言ったのに...ウソ)邦楽の家元襲名リサイタルで,夏にホログラムの雪を降らせるということなんですが,その仕掛けが『回雪』という夏の着物と『勁雪』という笛にあるらしい.なんでも,笛からマイクロウエーブを着物に照射して(なぜか紫外線となり),可視光の像が再生されるということです.さすがはSFです.不可能はありません.でも,着物が紗合わせ(うすい生地の2枚重ね)で,モアレが出るとかいいとこついてます.(ハヤカワ文庫, JA753,2004年,ISBN4-15-030753-9)

エンダーのゲーム(オースン・スコット・カード)

裏表紙によると「捕らえた人間を容赦なく殺戮し,地球人の呼びかけにまるで答えようとしない昆虫型異星人バガー.その第三次攻撃に備え,優秀な司令官を育成すべくバトルスクールは設立された…」.その,(いやーん)バガーを打ち破るためのあらゆる訓練ですんごい成績を収めた(ウイーク)エンダーの成長を描いたSFです.そこにちょこっとですが,ホログラムが登場します.ビデオが「立体像」で映されるという個所では,「立体」のフリ仮名がホロとなってます.また,「対象物が空中に浮かんでいるホログラフィックなゲーム」や,「ゲームはホログラフィックディスプレイで,彼のファイターは,ちっぽけな光の点…」などとあります.さらに,ホログラフも出てきますが,これはお間違いだと思います.(ハヤカワ文庫, SF746,1987年,ISBN4-15-010746-7)

カウント・ゼロ(ウィリアム・ギブスン)

裏表紙の粗筋によると,「新米ハッカーのボビイ,別名カウント・ゼロは,新しく手に入れた侵入ソフトの助けを借りて電脳空間に没入していた.(後略)」ということで,ギブスンの長編2作目です.前作のニューロマンサーの7年後と言う設定で,またまた色々なホログラムが登場します.たとえば,「バスの窓枠を飾り立てる,葉書ホログラム」,「替玉ホログラム」,「ホロ投映機」,「ホロポルノ装置」,「接着ホログラムのマリア」,「美術品が記録された反射ホログラム」,「Tシャツの胸についたホロデカール」,「マカオの眺望ホログラム」,「記念碑のぼやけたホログラム」,などです.前作とネタがあまりダブらないところが素晴らしいです.(ハヤカワ文庫, SF735,1987年,ISBN4-15-010735-1)

暗闇のスキャナー(フィリップ・K・ディック)

覆面麻薬捜査官アークターは謎の麻薬「物質D」の捜査のため自分自身を盗視聴機で監視する羽目になる.この盗視聴機がホログラム・スキャナーで,複数のスキャナーにより記録した空間を完全に再現できるという代物です.(創元SF文庫, SFテ19, 1991年, ISBN 4-488-69609-0 C0197)

獣の顔を持つ天使(中村うさぎ)

新感覚スペースオペラ,「宇宙海賊ギル&ルーナ」の第2弾です.カバー裏の粗筋の冒頭に−「ヴァルキスIVに来るがいい」ホログラムに映った男は俺に向かってそう言った。−とあります.そのおかげで検索に引っかかりました.このホログラムはブレスレットから投影されるということです.他にもホロ・メールやら,ホログラフィ映像,ホロ・ムービーとかも出てきます.でも,ストーリーが進んでいくにしたがってだんだんと出現頻度が落ちていきます.(富士見ファンタジア文庫, 84-2, 1998年, ISBN 4-8921-2790-2 C0193)

殺人摩天楼(フィリップ・カー)

ロサンジェルス都心部に完成間近のインテリジェントビル,受付にはリアルタイムホログラム映像のエージェントソフト,そして,エレベーター・空調・照明・掃除・警備・尿検査にいたるまですべてをコンピュータで管理する.そのビルで不可解な連続殺人が発生する.そして,関係者がビル内に閉じ込められ・・・.というパニック・ホラー小説です.

ホログラムはディスプレイとしてたびたび登場します.しかし,単なる脇役的小道具ではなく,ホログラムを投影するレーザーが終盤において重要な役割を演じます.(新潮文庫, カ-18-6, 1998年, ISBN 4-10-238006-X C0197)

さよならジュピター(小松左京)

22世紀,太陽系では木星太陽化計画が進められていた.そこに,太陽系50億年の最大の危機が・・・このSF小説にいろいろとホログラフィが登場します.たとえば,火星で見つかったナスカ型図形がメーザー・ホログラフィで,地球上のナスカ・ホログラフィ・メッセージと補完的な関係にあるそうです.他にもいろいろと・・・良く見たらホログラフになっています.これは「あぁ勘違い」のネタにします.(徳間文庫, 201-2,3, 1983年, ISBN 4-19-577438-1, -577439-X C0193)

時空ドーナツ(ルーディ・ラッカー)

仕事はコンピュータとロボットにまかせ,人々はあらゆる人生を3Dフルカラー映像ホローで体験するだけ.コンピュータと脳を直接接続するエンジェルのヴァーナーはそんな退屈な世界を我慢できずミクロとマクロの宇宙をめぐる冒険に行くというのが本筋です.ここに小道具としてでてくる3Dフルカラー映像ホローこそホログラムの原理を利用した装置なのです.もっとも,小説ですから詳しい原理の説明などはあるわけがありません.ホローは映像だけでなく,音響も立体的に再現し,観察者はその立体映像音響空間の中に入り込むことができます.まるでスタートレックのホロデックのようです.(ハヤカワ文庫, SFラ39, 1998年, ISBN 4-15-011249-5 C0197)

聖なる侵入(フィリップ・K・ディック)

ディック晩年の問題作「ヴァリス」を展開させた作品です.外宇宙で処女受胎された生命を邪悪な地球に送るために帰還する母とその夫が事故に巻き込まれます.ここに小道具としてホログラムがいろいろと登場します.圧巻はホログラム化された聖書で,聖書の全体的な構造がどの角度からも見ることができて,観察軸の傾きに応じて異なったメッセージを引き出すことができ,インタラクティブにもなるのだそうです.(創元SF文庫, SFテ17, 1990年, ISBN 4-488-69607-4 C0197)

ゼウスガーデン衰亡史(小林恭二)

しょぼい遊技場だった「下高井戸遊技場」が「ゼウスガーデン」と名を変え,90年間にわたり快楽の帝国として君臨し,日本国の独立をも脅かす存在になる・・・というテーマパークSFです.そのアトラクションのいくつかに,立体映像装置としてホログラフが出てきます.それは,遠景だったり,幽霊だったり,劇場での上演だったり,ミケランジェロの天地創造だったり,妖精だったり,竜神だったりします.(ハルキ文庫, こ 5-1, 1999年, ISBN 4-89456-589-7 C0193)

ソリトンの悪魔(梅原克文)

カバー裏のあらすじは,「2016年,日本の最西端・与那国島の沖合いに浮かぶ完成間近の海上情報都市<オーシャンテクノポリス>は謎の波動物体に直撃され,突如海の藻屑と化した.・・・」というわけで,海中を探る最新の装置として,立体音響ホロフォニックスソナーが登場します.それは何かとたずねたら,「それは聴覚に属するものだろうが,日常生活で言う聴覚をはるかに超えていた.視覚とも聴覚とも区別しがたい未知の超感覚.おれの脳そのものがレーダーとなり,ソナーとなっている感覚.<立体音響視覚>だ.(本文より)」ということで,音響のホログラムソナーなのです.この装置が全編を通じて大活躍します.でも,残念ながら表記がホログラフになっちゃってます.(ソノラマ文庫NEXT, う 1-1, 1998年, ISBN 4-257-17333-5 C0193)

時は準宝石の螺旋のように(サミュエル・R・ディレーニー)

裏表紙のあらすじでは「…特別刑事部に追われる男が,ついに一人一人の全経歴を過去未来に亘って記憶しているホログラムを逆に利用して成り上がっていこうとするピカレスク的世界を描いて…」とあります.ホログラムは,バラバラにしても全体像を再生できるという原理(「ホログラム薔薇のかけら」の解説参照)のアナロジーで作られたホログラム式情報記録装置によって,個人の個々の情報から全体像が推測できるという感じです.表題作や「ホログラム」を含む10の短編が収録されていています.(サンリオSF文庫, 24-A,1979年)

捕われの女神(西谷 史)

199X年,新宿駅東口周辺は魔族により無法地帯と化していた.(主人公の)北明日香と(ゆかいな)仲間たちは捕らえられた大和の神・白鷺弓子を救出するためにこの特別区に潜入する・・.というわけで,幻影がホログラムだったりします.不死の科学者サンジェルマンがコンピュータ技術を駆使してホログラムを投影しているのです.魔族だったらホログラムを使わなくても幻影を出せそうですが,このサンジェルマンは魔族ではないというところが微妙なところです.あれ,しばらくお待ちください・・・ホログラムではなく,ホログラフと書いてあります.しかも,このホログラフは「実像」備えたところがウリらしいのですが,普通のホログラムでも実像は出せます(飛び出しているのは実像です).たぶん作者が言いたいのは「実像」ではなく「実体」のことでしょう.実体の上にホログラム像を重ねて出したり,人工知能(AI)を核にしてまわりにフィルム粒子という高分子化合物をつけたサイボットがホログラフだとあります.(アニメージュ文庫, N-057,1990年,ISBN4-19-669629-5)

また,続編の「氷界の女王」にも,「ルシファーの分身であるホログラフ」や,「銀河のホログラフ」など,きっとホログラムの間違いが登場します.(アニメージュ文庫, N-066,1991年,ISBN4-19-669642-2)

ニューロマンサー(ウィリアム・ギブスン)

いろいろな賞を受賞したサイバーパンクの先進的作品.この中にやたらめったらホログラムが登場します.たとえば,「富士電機のホログラム看板」,「ゲーセンのホログラムディスプレイ」,「ホログラムの時計の針」,「闘技場のリング上空のホログラム」,「メトロホログラフックス社のネオン」,「駅に貼ってあるホログラムポスター」,「小型ホログラム投影器」,「ホログラフィックディナーショー」,「ホログラムの星」,「廊下に投影された多数のホログラム」などです.(ハヤカワ文庫, SF672,1986年,ISBN4-15-010672-X)

ネットフォース 国家強奪計画(トム・クランシー)

2010年,FBI内にハイテク特捜部隊ネットフォースが設立された.人気シリーズの第2弾!ネットフォースは爆弾製造法のネット流出によって発生した爆破事件の捜査を開始・・・コンピューターの出力装置として「ホロプロジェクション」が登場します.3Dの表示装置なのですが,あくまでも小道具のひとつで,ストーリーの展開上は重要なものではありません.(角川文庫, ク 12-2,2000年,ISBN 4-04-283702-6)

物騒な女神たち(中村うさぎ)

新感覚スペースオペラ,「宇宙海賊ギル&ルーナ」の第1弾です.第2弾ホログラムが出てきたのでチェックしてみたところ,ありました.ずばり,ホログラフです!いきなりやっちゃってます.でも,そのあとは「ホログラフィ女優」(未来の映画女優らしい)や「ホロ・メール」やら,「ホログラフィ映画」,とかも出てきます.でも,出現は前半だけです.(富士見ファンタジア文庫, 84-2, 1997年, ISBN 4-8921-2766-X C0193)

ホロガール(ロバート・F・ヤング)

美人私立探偵ラインハートのもとにタレント協会の調査依頼がきた….そこにすごいホログラムが登場します.「ホロプリケーター」と言う装置で,単なる像を再生するのでは無く細胞まで再生してしまうのだそうです.能書きとしては,「レーザー・ホログラフィの基本原理を出発点として,それをはるかに超えるもの」なんだそうです.また,小道具として登場するレーザーロイドカメラでホロフィルムにホログラムが撮影できるみたいです.(SFマガジン 1979年5月号,早川書房)

ホログラム(サミュエル・R・ディレーニー)

原題は「HIGH WEIR」.火星地表で偶然発見した古代遺跡にある頭像,その目にレーザー光線を当てると,動くホログラムが映し出されます.ホログラムの撮影の原理や,ホログラムの一部分を取り出して再生しても被写体の全体が見えることなどがさりげなく説明されています.また,冒頭にはいつもこっちを向いている沈み彫り(スードスコピック)の顔のネタも出てきて,いけてます.(SFマガジン 1969年9月号,早川書房)

ホログラム街の女(F・ポール・ウィルスン)

原題は「DYDEETOWN WORLD」で,ダイディータウンのクローン娼婦から失踪した恋人探しを依頼された主人公の活躍を描いたSFハードボイルドです.ホログラムは建物のホログラム外装や娘のホログラム写真など,小道具的に出てくるだけです.ホロラー的にはこの本を本棚の目立つところに飾っておきましょう.(ハヤカワ文庫, SF1240,1998年,ISBN 4-15-011240-1)

ホログラム薔薇のかけら(ウィリアム・ギブスン / クローム襲撃)

'77年に発表されたギブスンの処女作.「薔薇を撮影したホログラムは,粉々になってもそれぞれに薔薇の全体像が記録されている.けれども,かけらはそれぞれに違った角度の薔薇を現す」と,ホログラムの性質について非常に正確に記述されています.ただし,これはレーザーで再生するホログラムの話です.業界的には「フレネルホログラム」とか「マスターホログラム」と呼びます.「H1」なんて呼んじゃったら,あなたは完全に業界人の仲間入りです.一般に市販されている白色光で再生できるホログラムは,粉々にしたら像も粉々です.ぜひ手元のホログラムで試してください.花火とか夜景を見ると楽しいホログラムメガネ(ホロスペックス(TM)など)の場合は,粉々にしてもちゃんと全体像が再生できます.でも,ほんとに粉にしてはだめです.短編集の標題にもなっている「クローム襲撃」にもホログラムが登場します.(ハヤカワ文庫, SF717,1987年,ISBN 4-15-010717-3)

真夜中をダウンロード(ウイリアム・ブラウニング・スペンサー)

20世紀の英語圏SFを年代別に収録した短編集の第6巻に収録された「真夜中をダウンロード」にホログラムが登場します.ネットワークのブロードハイウェイで提供される深夜番組,「アメリカン・ミッドナイト」のホロショー(特定個人の神経マップをもとに人工知能が操るシミュレーション)のホログラムが突然暴走し,ネットワークの掃除人がネットに潜る・・・という,この手のSFではお決まりの展開となります.(河出書房, 20世紀SF(6)1990年代 遺伝子戦争,ン2-6,2001年,ISBN 4-309-46207-3)

マリーゴールドアウトレット(ナンシー・クレス)

この短編作品はホログラム映像の猫と戯れる自閉症の少年の悲劇を描いています.猫の神秘性を題材に,17編の猫ホラーを収録した作品集『魔猫』Twist of the Tale(エレン・ダトロウ編)のために書き下ろされました.このホログラム投影装置は黒くて小さな金属製の箱で,電池を入れスイッチをオンにすると,大きな金色の猫が箱の周りを歩き回ります.少年は猫の映像と飽きもせず戯れますが,いつのまにか電池が抜かれて像が出なくなります.しかし,少年は投影装置が無くてもいつでもその猫と会えるようになります.そして・・・(早川書房, 117128,1999年,ISBN 4-15-208242-9)

モナリザ・オーヴァドライヴ(ウィリアム・ギブスン)

ニューロマンサー」,「カウントゼロ」に続く電脳空間3部作の完結編です.前作,前々作の登場人物たちと同様にホログラムもガンガン登場します.たとえば,「ぼんやりと瞬く蒼ざめたホログラム」,「ホロ投影機」,「福音伝道屋のホログラムのイエス」,「日本人観光客が持っているホロレコーダ」,「ホログラムハガキ」,「ホログラムの羊」,「大きな店のウィンドウに飾られたアイドルのホログラム」,「ホロ・テーブル」,「立方体のホロ=ディスプレイ」などです.(ハヤカワ文庫SF, SF808,1989年,ISBN 4-15-010808-0)

リングワールド(ラリイ・ニーブン)

裏表紙の要約の出だしが,「200歳の探検家ルイス・ウーは,パペッティア人のネサスから見せられた一枚のホロに目をむいた.…」というわけで,出てきました.本文では,「立体写真」のフリガナが「ホロプリント」になっています.これが何度も何度も何度も登場しますが,某所ではフリガナが「ホログラフ」になっていて,あーあという感じですが実は内心「勘違いネタ見っけ!」と小さくガッツポーズをしていたりで複雑な心境です.原書に当たっていないので,元のミスか翻訳ミスかは分かりません.また,個室の壁に景色を投影する「立体投影」のフリガナが「ホロスケープ」で,立体地図もホロだったりします.原書の出版は1970年で,ホログラムが登場する小説としては初期の部類に属します.(ハヤカワ文庫SF, SF616,1985年,ISBN 4-15-010616-9)

リンク(ウォルト・ベッカー

アフリカのマリの遺跡で見つかった異星人の物と見られる遺物から現れた立体ホログラムは南米のある遺跡の位置を示していた.その遺跡には人類の起源を解き明かす秘密がぁぁぁぁ.というわけで,異星人の残した立体ホログラム映像がいろいろと登場してくれます.(徳間書店, 1999年,ISBN 4-19-8609914-8)

わが赴くは蒼き大地(田中光二)

裏表紙のあらすじから抜粋すると,「宇宙から突然の襲撃を受け,海中都市にすむ人々だけが生き残った.敵の弱点であるインフルエンザウィルスの増殖する設備を持つ別の海底都市へ深海の決死行へと赴くのだが・・・」というわけで,そのための特殊潜水艦「ノーチラス十世」号の特殊装備のひとつが「レーザーホログラフィ装置」なのです.これはどんな装置かというと・・・わかりません!後にも先にも一回きり,装備の名前の紹介しか出てきません.うっかりして読み飛ばしたのかもしれませんが,謎は解けませんでした.初出はSFマガジンで1974年2, 3月号です.(ハルキ文庫, た7-1,1999年,ISBN 4-89456-580-3)


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