ところで,ホログラムって何?
ホログラムっていったい何なのでしょうか?ここでは,乱れ飛ぶ専門用語を用語集形式で説明していきます.項目だけあってリンク無いものは準備中です.また,説明して欲しい用語のリクエストがありましたらメールでcatfish@holorer.jpまでどしどしお知らせください.
2D-3D
複数の2次元画像を異なる奥行きに配置して立体感を出す手法.舞台の背景の書き割りみたいなものです.2次元の写真やイラストから簡単に3次元的な再生像が作製できるのが利点ですが,ホロラーとしては手抜き見え見えであまりうれしくありません.
アニメーテッドホログラム
ホログラムの再生像を見る視点を変えたときに,像が切り替わったり一部が動くホログラムです.あまり動きを派手にすると立体感が損なわれるので,演出のバランスが重要です.
エンボスホログラム
クレジットカードとかについている銀色のホログラムをエンボスホログラムと言います.「エンボス」とは浮き彫りという意味で,ホログラムの干渉縞を表面の凹凸で表す金型を作り,この型をプレスしてホログラムを大量生産することができます.銀色以外の色や透明なものも作れます.また,グレーティングもこの方法で大量生産できます.
オルソスコピック (orthoscopic)
3次元像の奥行きが実物と同じになっていること.ホログラムや他の3次元ディスプレイでは,設定が正しくないと奥行きが実物と逆なスードスコピックになってしまう.
干渉縞
レーザーの光を二つに分けてから重ねると干渉縞が現れます.これは同じような模様を重ねたときにできる「モアレ」のようなものです.
上に示した写真は,レーザーを使ってできた干渉縞を撮影したものです.ホログラムの場合はこの干渉縞を特殊な(解像度がめちゃめちゃ高い)写真乾板で直接記録します.この干渉縞は,一方の光が波長の数分の1,つまり1万分の1ミリ程度ぶれると崩れてしまいます.ですから,ホログラムを撮影するときは,物体が動かないようにしっかりと固定することが大切です.干渉縞をわざと崩した画像が下に示すアニメーションです.この動きをコンピュータでシミュレーションしたソフトがCatFreshシリーズです.
WMV形式ムービー(87KB)
グレーティング(回折格子, grating)
グレーティングというとあまり聞きなれない言葉だと思いますが,光に対する性質が周期的に変化しているものです.そういうところに光を当てると,その構造によって光が折れ曲がります.これを回折と言います.たとえばCD(コンパクトディスク)の溝は周期的に刻んであるので,そこに白い光を当てると光の波長によって折れ曲がる(回折する)角度が違うので虹色に分解されます.その様子の例はグレーティングギャラリーをご覧ください.
グレーティングとホログラムはよく似ています.ホログラムを撮影するのと同じ方法でグレーティングを作ることができ,それをホログラフィックグレーティングとも呼びます.また,3次元像を記録したホログラムは,物体の3次元情報によってグレーティングを複雑に変化させたものと見ることもできます.
デニシュクホログラム
被写体の手前にホログラム乾板を置き,この乾板を通してレーザーの光を当てるとデニシュクホログラムが撮影できます.撮影が比較的簡単なので,初めて撮影するホログラムに最適です.しかも,太陽光や電球などの白色光で再生しても,特定の色(波長)の光しか反射しないので,色によるボケの無い像が再生できます.ちなみに,「デニシュク」はこの撮影方式を考案したソ連(当時)の科学者の名前です.20世紀初頭に,色素を使わないカラー写真を考案した「リップマン」の撮影方式と類似しているので,「リップマンホログラム」とも呼ばれますが,厳密には違います.
スードスコピック (pseudoscopic)
3次元像の奥行きが実物と逆になっていること.ホログラムを撮影したときの参照光と逆に進む光を当てて像を再生すると表われる.また,ステレオ写真などにおいて左右の画像を入れ間違えたり,偏光めがね式ステレオ映画などでメガネを上下逆さにかけると表われる.人間の顔は出っ張っているものという知識があるので,スードスコピックに表示しても気が付かないことが多い.これを上手く利用すると,常に観察者のほうを向く不思議なホログラムポートレイトができる.奥行きが正常な場合はオルソスコピックという.
投射型ホログラム
ホログラムを特殊なスクリーン(自己回帰性スクリーンなど)に投射すると大きな3次元像を表示できます.これを投射型ホログラムといいます.普通のスクリーンにホログラムを投射すると2次元の像になります.やはり2次元像ですが,ホログラム自体がスクリーンというものもあります.
ところで,スターウォーズでR2D2が投射するプリンセスレイア像など,SF映画などには何も無い空間に投射するホログラム像が良く出てきます.フィクション,つまり虚構の世界なら現実にありえないことが出てきてもいちいち文句を言う筋合いは無いのですが,プリンセスレイアは影響力が大きすぎました.この映画のおかげで,普通の人々はホログラムとはこういうものだと,現実と虚構の区別がつかなくなってしまいました.ホロラーを目指す皆さんは,「何も無い空間に投射するホログラムは実在しない」ということを忘れないでください.「霧とか煙があれば投射できるのでは」という意見もあるかもしれませんが,これでは空間の特定の場所で光を反射させることができないので,3次元の像は出せません.2次元像でだますことは19世紀に行なわれています.
白色光再生ホログラム
太陽光や電灯など,白色光で立体像の再生が可能なホログラム.イメージホログラム,デニシュクホログラム,レインボウホログラムなどがある.
ホログラファ
ホログラムを撮影する人のことです.
ホログラフィ
ホログラムを作る方法(技術)のことです.
ホログラフィックステレオグラム
ビデオカメラや映画のカメラを被写体の前を移動させながら多数の視点からの2次元画像を撮影し,それを1枚のホログラムに記録します.被写体にレーザーを当てて撮影するホログラムに比べると理論的には立体感などの点で劣りますが,適切に撮影されたホログラフィックステレオグラムではレーザー撮影ホログラムと区別できないくらいの画質が得られます.暗室が不要で屋外でも撮影できるので,人物や風景の撮影に向きます.また,コンピュータグラフィックスで作成した画像も利用できます.撮影中は被写体は静止している必要がありますが,意図的に動きを入れることでアニメーテッドホログラムとすることも可能です.
ホログラム
辞書などでは「レーザー光線で撮影する立体写真」と説明されています.立体(3次元)といえばステレオグラムとか色々ありますが,ホログラムは現在知られている中で唯一の完全な3次元情報を記録・再現できる方法です.
ホログラムで物体を撮影するには像を結ぶためのレンズは不要です.そのため特定の場所に焦点を合わせる必要も無く,3次元物体をあたかもそこに実物があるように記録することができます.3次元の記録の秘密は光の干渉にあります.波の山と山,谷と谷が重なると強め合い,山と谷が重なると弱まることを干渉といいます.ホログラムは物体からの光と,参照光という別の光の干渉をうまく利用することで,光の強弱しか記録できない材料に物体からの光の方向も記録しています.干渉については干渉縞の項もご覧ください.
ホログラムスクリーン
3次元像ではありませんがホログラムを利用した面白いスクリーンが実用化されています.お店などのディスプレイ用に,ガラスの上にこのホログラムスクリーンを貼ります.スクリーンは普段はほとんど透明ですが,ビデオプロジェクタで(2次元)像を投射すると,スクリーン上に明るい像が見えるようになります.このスクリーンはホログラムの弱点(見える範囲が限られる,特別な照明が要る)を逆手に取ったアイデア物です.白いスクリーンの像をホログラムとして記録し,普通の照明の変わりに映像を投影します.
ホロラー
ホログラム愛好家のことです.ただし,猫魚による造語なのでまだまだ世間一般では通用しません.どんどん使って普及させましょう.流行語大賞を狙います.英語で表記する場合は holorer としてください.
マルチプレックスホログラム
円筒状で周囲360度から像が見えるホログラムです.ホログラフィックステレオグラムの特別なものです.
リップマンホログラム
→デニシュクホログラム
レインボウホログラム
レーザーで撮影したホログラムを白色光(太陽光や電球の光など)で照明すると,像の出る位置が色(波長)により異なるので,色のにじんだボケた像となってしまい,きれいな像を再生できません.レインボウホログラムは,ある視点からはひとつの色の像だけが見えるようにすることで,ボケの無いきれいな立体像を再現することができます.視点を左右に変化させたときは立体的に物体の見え方が変化し,視点を上下に変化させると,像の色が虹色に変化します.クレジットカードなどについているエンボスホログラムもレインボウホログラムの一種です.単色だけでなく,フルカラーのレインボウホログラムもあります.
レンティキュラー
ホログラムのようでホログラムでない(べんべん).それがレンティキュラー写真です.ホロラーでない人の中にはこれをホログラムだと思い込んでいる人の割合が多いです.かまぼこのような細長くて小さいレンズが一列に並んだものをレンティキュラーシートと言います.このシートのひとつひとつのレンズの後ろに,物体を色々な方向からみた画像を細長くして並べると立体的に見えます.立体にする代わりに絵が切り替わるものもあります.
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